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法政大学経済学部同窓会同窓会特別講座>細田亜津子教授
同窓会特別講座

森嘉兵衛賞々金の一部でタナ・トラジャでの子供教育支援
細田亜津子 長崎国際大学教授
アワン小学校で  この度、森嘉兵衛賞を受賞し、賞金をいただきましたので、これをタナ・トラジャ県(インドネシア)にて小学生の教育支援として使用してきましたので、報告いたします。
 支援した小学校は、アワン小学校(Sekolah Dasar Negeri No.23 Awan)です。アワンという地域は、リンディンアロー郡、アワン村で、タナ・トラジャ県の北部に位置します。この地域は、山岳民族といわれるトラジャ人の住む県内のさらに山岳地域です。ここは山岳地域のため、県南、県央部に比べ、水田からの米の収穫は少ないのですが、良質なコーヒーの産地でもあります。しかし、アワンは県内で最も貧しい地域だといわれています。
 私はこの地域に行くことになったのは、この地域よりさらに北にあるバルップの調査をするため、その途中でアワンを訪ねることになったのが最初です。また、私は、トラジャの伝統的家屋である高床式舟形家屋=トンコナンの修復保存活動を行ってきましたが、2000年に一区切りがついたため、2003年から小学生の教育支援をトラジャの友人と一緒に組織化し支援を始めました。私は最初からアワンの小学校の支援を希望していました。
 アワンの小学校を訪問したときの印象は、強烈でした。一棟の校舎に間仕切りをした教室があり、子供たちは土の上に置かれた数個の机に座って、静かにそして楽しそうにおしゃべりをしていました。先生は、一人きりで、低学年と高学年を行ったり来たりして教えていました。黒板も、教科書も、ノートも鉛筆もありませんでした。生徒の中には、多分兄弟のお下がりだろうと思われる教科書を持ってきている子供がいましたので、その生徒の教科書で数人が学んでいたのです。トイレもありませんでした。
 そこの支援を始めました。最初にトイレを作りました。それから、私たちが小学生の支援をしていることの効が奏したのか、県により校舎が一棟増築されました。先生も増えたのです。小学校に通ってくる生徒の数は前よりも増えました。それでも、低学年、特に小学1,2年は学校に通って来るのですが、5,6年になると家の手伝いをするために来なくなる現実がありました。
 昨年は、支援組織の資金不足でアワン小学校への支援ができませんでした。それで、今年いただいた賞金をアワンの支援に使いました。支援した小学生は、このアワン小学校でもとくに困っている生徒を選んでもらい3年生7名、4年生8名、5年生8名、6年生7名の合計30名を支援することができました。
 賞金をいただいた時に、トラジャでお世話になった人びとと水牛を殺して食べようと思ったのですが、トラジャでは水牛は高くこの賞金では買えません。水牛に比べると豚は購入して殺して皆で食べることはできるのですが、やはり教育につかわせていただきました。ありがとうございました。
 さて、トラジャ人は、水牛と豚を儀礼のための重要な家禽として大切にしています。水牛は、借金の返済、労働報酬などに使われます。もっとおもしろいのは、トラジャには多種類の日本では見たことが無い模様の水牛がいます。日本人が水牛というと思い浮かべる黒毛の水牛は、トラジャでは標準の価値であり、それ以外に水牛の模様、白毛に模様の位置、毛並み、太さ、角の大きさと形などで水牛の価値が決まってきます。この水牛を大切に育て、葬儀の時に借金の返済に使用するか、または供出し殺されます。葬儀を行う家系は、水牛を沢山殺し、参列者に十分なご馳走をふるまうことがトラジャ社会の中では価値の確実な定着となるのです。お金をもっているだけではトラジャ社会ではステータスの確実な証拠にはならないのです。
 この葬儀や水牛に関係する労働報酬もみのがしてはいけないことだと思います。例えば、葬儀会場を作ることでの労働報酬、水牛の売買、水牛の飼育用の手作りの綱、水牛をモチーフとした彫刻の売買での利益など水牛に関わる小商いによる小規模の経済活動もトラジャ社会では活発です。
 このような小規模のトラジャ社会内の経済活動と比較すると、コーヒーと丁子(クローブ)は換金作物として市場経済で取引されるものです。スハルトファミリーに独占されていたこれらの市場取引は、スハルト政権が倒れると解放されてコーヒーやクローブを栽培していた農民は、市場で売買できるようになり一時的に収入が増えました。トラジャ県内の西部地域、北部地域は特にこの傾向がありました。農民はパラボラアンテナを購入していたので、西部、北部をまわると、どの家がもうかったのかすぐにわかるものでした。しかし、テレビを持っているわけでもない家族がパラボラアンテナをつけてもしかたがないのに、パラボラアンテナを購入していたのは興味深い現象でした。しかし、そのパラボラアンテナも洗濯物干しになっていたり、「いったい何のために購入したのか」と今でも失笑します。きっと、次にはテレビを買えると思ったのでしょうか。次にトラじゃに行ったときに聞いてみようを思っています。
 トラジャで有名なものに葬儀があります。今年もトラジャに滞在している間に葬儀がいくつもありました。葬儀会場では、仮設の小屋で参列者たちが接待をうけ、葬儀の進行をみていました。しかし、今年、私は、水牛が会場に供出されたのですが、殺される場面に遭遇することができず残念に思っています。しかし、旧友に会えましたし、トラジャ人の葬儀を楽しむ生き生きとした様子をみるだけでこちらも満足しました。
 受賞した本を、トラジャ人にプレゼントしましたらとても喜んでくれました。その上、賞金でアワン小学校の支援までできました。30名の子どもたちは、今も幸福な気持ちで小学校に通っているでしょう。
 最後にこのような賞をいただいたことに感謝するとともに、これを機に次の研究に励んでいきたいと思っています。

(2008.1.14)

細田亜津子教授 筆者:細田亜津子(ほそだ あつこ)

長崎国際大学教授

法政大学文学部卒
法政大学大学院経済学科修士課程修了
現長崎国際大学教授、今日に至る