![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 法政大学経済学部同窓会は 創立20周年を迎えます ![]() 法政大学経済学部同窓会事務局 〒194-0298 東京都町田市相原町4342 電話・FAX:042-783-2550 (火・水・金曜 9時〜16時) |
法政大学経済学部同窓会>同窓会特別講座>馬場敏幸准教授
第二次世界大戦終了後、東・東南アジアでは当初アジアNIEsそしてASEAN4、中国などが経済発展を遂げました。一般的には、当初は輸入代替工業化戦略による発展、その後輸出志向工業化戦略への転換による発展となります。当初うまく機能した輸入代替工業化戦略は、(1)国内市場の需要頭打ちによる成長の鈍化、(2)裾野産業の貧弱さのため工業製品を生産すればするほど部品や素材を国外から調達しなければならないことによる貿易収支の悪化、などの問題が起こり、各国は輸出志向工業化戦略へと転換しました。この戦略転換により各国とも市場の壁はある程度乗り越えることが出来ました。しかし裾野産業の貧弱さは、解消されつつあるものの依然として各国の課題として残されています。 このようにアジアの工業的発展のために各国で裾野産業を育成することが大切なのです。しかし、歴史的に見て裾野産業が重要であるとは1980年代ごろまで強く認識されてこなかった経緯があります。それどころか、大量生産化の進展による生産性の増大は、裾野産業に多く見られるような小規模企業をなくすと考えられてきたのが一般的だったのです。しかし最近ではこうした認識は改められてきています。こうした議論の流れについては、本書の第2章で詳しく説明しています。 第3章では各国の自動車・二輪産業と電機・電子産業の国内外からの調達構造に焦点をあて、各国の裾野産業からの調達構造の変遷を定量化しようと試みました。これはそれまであいまいであった裾野産業の現状とこれまでの推移について明確な形で提示したかったからです。分析の結果、部品の部品を外国に依存するという、隠れた調達・依存体質が定量的に明らかとなりました。また一口に裾野産業といっても、自動車・二輪産業と電機・電子産業では大きな相違点があると判明しました。自動車・二輪産業は自国からの調達を重視する産業であり、逆に、電機・電子産業は構造的に海外依存する産業であるということです。そして、その要因は、自動車・二輪産業と電機・電子産業の、「部品特性の違い」、「需要先よる要求品質や設計の違い」、「政策の違い」などであること説明しました。 第4章ではアジア各国による長年の裾野産業育成の結果、国産化率と技術水準はどのように変化したのかに関して、日本とほぼ同時期の1920年代に自動車生産を始めたインドネシアのケーススタディより考えてみました。育成された各地場企業は、顧客企業に対して製造技術だけを提供しているのか、開発・設計をも担える力があるのかという観点で分析を試みたのです。結果として、アセアン4の各国は製造技術を提供する段階にとどまっており、開発能力は自動車メーカーの要求する水準には達していないとの結論に達しました。一方で韓国では自動車メーカーの要求する開発能力を持つ部品メーカーも存在しており、部品メーカーの技術水準は高まりつつあると結論づけられました。 第5章では各国ともその必要性を認識しつつも技術移転が困難であるといわれている金型産業に焦点を当て、裾野産業関連技術の技術移転に必要な要件は何かについて分析を試みました。その結果、裾野産業関連技術の移転に必要な要件は、「一定規模以上の市場の存在」、「デジタル技術の導入」、「人材育成」の3点の相乗効果であると指摘しました。デジタル技術は裾野産業関連技術の移転を容易にしましたが、デジタル技術導入そのものだけでは有効に働かないとの指摘です。一方、その上のレベルの品質を提供している日本の競争力の源泉として、「奉納的製造精神」の存在も指摘しました。「奉納的製造精神」とは、まるで神に捧げるかのように手を抜かず要求品質以上の品質で製造するあるいは製造してしまう日本の金型製作者のある種の「職人魂」あるいは「製品に対する愛情」を筆者が定義したものです。 本書は、こうした、調達構造から見た裾野産業の現状の定量化、現地裾野産業の開発・設計・生産能力、将来の発展に必要な技術の移転要件の解明、の3つの分析が主な内容となっています。本書を執筆したのは2002年ごろまでのデータが元になっていますが、現在アジアは急速に変化しつつあります。最近、中国、韓国などを訪問しながらその変化の速さを実感しています。今後は、さらに直近のデータに基づいて分析を加えることを考えています。また、技術移転の大きな流れとして、欧州、米国、日本、アジアという流れがあります。この流れについて、国や社会の特性、時代の特性、技術の変遷と移転の難易度に着目しつつ、解明していけたらと考えています。 (2007.8.27)
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